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スポーツ貧血

スポーツ貧血とは

スポーツ貧血の主な症状は、運動中の息切れや動悸、疲れやすさ、慢性的なだるさなどであり、これによりパフォーマンスの低下が見られることがあります。
スポーツではマラソンやトライアスロン、水泳などの運動負荷の長く強いスポーツや、剣道やバレーボール、バスケットボールなどの足底部への過重負荷が強いスポーツ、フィギュアスケートや新体操、アーティスティックスイミングなどの運動量と食事量のバランスの偏ったスポーツで生じやすくなります。プロ選手や実業団選手、部活動でスポーツを行っているアスリートだけでなく、趣味でマラソンやトライアスロンなどのスポーツを行っている方でも注意が必要です。貧血が起こる原因は、激しいトレーニングによって汗による鉄の排出が増え、さらに足底部の圧力により血球が壊れる溶血が生じます。その結果、ヘモグロビンを生成するために必要な鉄が欠乏してしまい貧血になってしまう、鉄欠乏性貧血が最も多く認められます。

アスリートは通常の人よりも鉄を多く摂取する必要がありますが、鉄は消化管での吸収が悪く数%しか吸収されず、また体質的に鉄の吸収が悪い方もいるため摂取量を増やしても鉄不足が解消されない場合があります。その場合はビタミンCと一緒に摂取するようにするなど、食事の質と量について注意が必要です。また、鉄以外にも亜鉛やビタミンB12、葉酸などが足りずに貧血を生じる場合もあります。

当院では長年トップアスリートの診療を行ってきた医師による診察と診断、治療で、他院で「スポーツ貧血だから治らない」、「運動制限が必要」などと言われた患者さんでも数多く改善させてきました。そのような場合でもあきらめずに、当院へご相談ください。

貧血とは

貧血は、体内のヘモグロビンが基準値よりも少ない状態を指します。ヘモグロビンは赤血球内に存在し、鉄とタンパク質から生成されています。その主な役割は、身体全体に酸素を運搬することです。

鉄が不足すると、ヘモグロビンの生成が減少し、「鉄欠乏性貧血」と呼ばれる状態が生じます。スポーツが原因で発生する貧血の大部分は鉄欠乏性貧血です。しかし、鉄欠乏性以外にも数多くの貧血があり、特に血液が壊れる「溶血」を生じやすいスポーツでは、血液を構成する様々な要素が足りなくなることで貧血が生じる可能性があります。スポーツをやっていなければ症状がでないような軽度の貧血でも、スポーツを行うことで自覚症状が出て早期に診断に至る場合もあります。

貧血になると、体内で酸素が効果的に供給されなくなり、結果として動悸、息切れ、疲労感、だるさなどの症状が現れることがあります。スポーツにおいては、激しいトレーニングによってより多くの鉄などの血球構成要素が必要となり、それらが不足することで結果として貧血を生じることがよく見られます。したがって、アスリートでは特に食事や栄養の管理に気を付け、適切な栄養摂取を心がけることが重要です。

 

通常の貧血とスポーツ貧血の違い

一般的な貧血とスポーツ貧血との間にはいくつかの違いがあります。まず、貧血の診断となる検査数値の基準に違いがみられます。スポーツをする人は通常、一般の基準よりも酸素要求が高いため、スポーツ内科では貧血の診断基準もそれに合わせて高めに設定されることが一般的です。

アスリートの場合、激しいトレーニングにより通常よりも鉄などの需要が増え、血液中のヘモグロビンや赤血球数が相対的に多くなることがあります。そのため、一般の基準では正常でも、アスリートが同じ基準で診断されると、貧血とされることがあります。したがって、アスリートの貧血の診断には、通常の基準よりも厳密な基準が適用されることがあります。

アスリートは通常の健康診断で正常とされても、正常領域下限の場合は酸素要求が増えるスポーツの特性から、スポーツ内科では貧血と診断されることが珍しくありません。また、治療開始の基準に関しても異なっています。一般的には軽度の貧血では栄養指導のみで、内服加療を行うことは稀ですが、アスリートでは軽度の貧血でもすでにトレーニング効率は低下しており、内服加療を早めに行う必要があります。また単に鉄剤を使用するだけでなく、他の貧血に関係する栄養素やビタミンなど、栄養摂取全体の見直しやカロリー不足の解消も重要です。スポーツ貧血はしばしばカロリー不足が原因となっているため、十分なエネルギーを摂ることも改善の一環となります。

スポーツ貧血の原因

スポーツ貧血の原因は下記のように様々です。

鉄の不足

  •  鉄の需要の増加
  • 鉄の摂取不足、吸収低下
  • 鉄が失われる(溶血)

溶血

  •  足底部への繰り返す衝撃による赤血球の破壊

その他の要因

  • エネルギー不足
  • 希釈性貧血
  • 慢性疲労やストレスによる骨髄機能低下
  • 慢性炎症

 

スポーツ貧血の検査

スポーツ貧血の診断には、血液検査が主に使用されます。主要な検査項目には次のものがあります。

ヘモグロビン(Hb)

ヘモグロビンは酸素を運搬する赤血球中のタンパク質で、貧血の程度を示す重要な指標です。

鉄(Fe)

鉄はヘモグロビン合成に必要な栄養素であり、不足すると貧血が引き起こされます。

フェリチン

フェリチンは鉄の貯蔵形態で、体内の鉄の蓄積状態を示す重要な検査項目です。貧血の過程では、ヘモグロビンの低下前にまずフェリチンの値が減少します。

網状赤血球数

網状赤血球数は溶血性貧血の評価に用いられ、赤血球の生成異常を示すことがあります。

総鉄結合能(TIBC)

鉄がどれだけ輸送されるかを示す検査項目で、貧血の診断に重要な情報を提供します。

アスリートは、年3~4回の血液検査を受け、特にヘモグロビン、鉄、フェリチンの値を常に把握しておくことが重要です。これにより、鉄欠乏状態が早期に発見され、適切な対策や治療が行われることが期待されます。また、検査の際は同じ医療機関で続けて検査することが望ましいです。

スポーツ貧血の治療

スポーツ貧血の治療には鉄剤など内服薬服用が主要な治療となります。注射薬は消化肝障害や肝障害などによりどうしても内服継続ができないなどの特殊な場合に限られます。治療中は随時血液検査を行い、鉄欠乏性貧血では特に貯蔵鉄であるフェリチンの値を調整の基準として使用します。鉄剤の内服中には便が黒くなることがありますが、酸化した鉄が便に混じったものであり正常な現象です。

治療の際には、副作用として下痢などの消化器症状が見られることがありますが、シロップ剤への変更などの調整で副作用を改善することが可能です。治療を途中で中断することなく、状態に合わせた最適な処方と栄養指導を行うことが重要です。

栄養指導は、患者様が食事内容を記録し、管理栄養士がそれを基に現状を把握・分析します。食事状況を詳細に把握し、パーソナライズされたアプローチで治療を進めることが効果的です。

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