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咳喘息

咳喘息とは

咳が続く場合は「咳喘息」と診断されることが一般的ですが、この診断には不明瞭な部分が多く、理解しにくいことがあります。咳喘息の定義によれば、慢性的な咳が主症状であり、喘鳴や呼吸困難がない特徴的な病態です。気道過敏性が亢進し、気管支拡張薬が有効で、気管支喘息の亜型とされています。

この病気は非常に曖昧で難しいものであり、咳が持続する一因として挙げられます。咳喘息は気管支喘息の前段階とも考えられ、慢性の炎症が関与しています。喘鳴がないため、本人や周囲の人が気づきにくいことがあり、そのため効果的な治療が難しいことがあります。

重要なのは、咳が風邪の一環ではなく、持続的である場合には気管支喘息や咳喘息を疑い、早期に適切な診断と治療を受けることです。風邪と思っていた咳が長引く場合や、治療が効果的でない場合は、専門の医師による診断を受けることが重要です。

咳喘息の症状・原因について

咳喘息は、その名前が示す通り、主な症状が咳であるため、特に咳に焦点を当てることが重要です。咳のパターンや原因は様々で、以下に挙げられた要因が引き起こすことがあります。

風邪

風邪や他の呼吸器感染症は、咳喘息を引き起こす要因となることがあります。

ほこりやダニ

環境の刺激物質、ほこり、ダニなどが咳を引き起こすことがあります。

ストレス

ストレスは免疫反応を変化させ、咳を引き起こす可能性があります。

過労

過労や疲労も咳の原因となることがあります。

アレルゲンの吸入

アレルゲンに晒されることで免疫反応が引き起こり、咳が発生することがあります。

気温差や気圧差

突然の気温や気圧の変化は、咳の誘因となることがあります。

黄砂や化学物質

大気中の汚染物質や化学物質は、咳を引き起こす可能性があります。

これらの要因により、咳喘息の症状が現れます。また、喘鳴が出現した場合は気管支喘息の可能性が高まり、注意深い診断が必要です。

 

咳喘息の診断に関して

感染症にかかっていない期間が8週間以内で、なおかつ喘鳴を伴わない咳が8週間以上続いている。また、喘鳴を伴う気管支喘息の既往歴がなく、胸部レントゲンで異常がみつからない。気道が過敏になり、咳が誘発され、アレルギー物質に反応して咳が生じ、同時に気管支拡張剤が咳に対して有効という条件を満たした場合に、咳喘息と診断されます。

現在の咳喘息の診断基準は難解で、全ての条件を満たして診断に至ることは多くはありません。気道の過敏性を調べる設備がない医療機関で診断されることも多く、アレルギー以外の炎症が原因で咳が続き咳喘息と診断される場合もあります。治療薬を使っていることでなんとなく効いている気がするというプラセボ効果や8週間という基準の厳しさも課題です。本人が病院で待たされることを嫌い、診断基準を満たすために薬の効果を過大評価するケースもあります。これらの現実的な問題から、現在の診断基準はご本人にとって不利益をもたらす可能性があります。治療が必要な咳喘息を放置しておくと将来気管支喘息を発症する可能性が高いといわれています。当院では多角的に検査し、正確な診断を行っています。

咳喘息の問診

咳のきっかけや症状の詳細、アレルギーの有無、特定の状況や時間帯での発生などを丁寧に尋ねます。診断基準には8週間以上の咳が必要とされていますが、8週間以内でも慎重な鑑別を行います。風邪後の咳や気温の変化による咳喘息の特徴も把握し、喘鳴の有無や強制呼気も聴診で詳細に確認します。他の呼吸器疾患や異常な症状がないかも含め、全体的な診察を行い、正確な診断と適切な治療に努めます。

胸部レントゲン写真

問診の結果、咳喘息の可能性が高いと思われる場合は、まず胸部レントゲン写真を撮影します。異常が見つかった場合は他の疾患の有無を調べます。咳喘息は他の疾患と見分けることが困難なため、異常が見つかった場合は迅速な対応が必要です。レントゲン被ばくは一般的な自然被ばくとほぼ同程度であり、妊娠中の方にも防護服を着用して安全に受けていただけます。

呼気NO検査

胸部レントゲン写真で異常が見られなかった場合、咳喘息の検査として呼気NO検査を行います。この検査はアレルギーの炎症を示す一酸化窒素(NO)の量を測定し、以下の基準に基づいて判定されます。

呼気NO値が25以下(小児20以下)……アレルギーの炎症によるものの可能性は低い

呼気NO値が25以上(小児25以上)ではアレルギーの炎症の可能性があると考えられる

呼気NO値が50以上(小児35以上)ではアレルギーによる強い炎症がみられる可能性が高い

当院では胸部レントゲン写真と呼気NOを組み合わせて咳喘息を診断することを強く推奨しています。

アレルギー検査

呼気NOが高く咳喘息の診断が近づいた場合、適切な治療期間を設けずに放置すると再発しやすく、気管支喘息が起きる可能性が高まります。咳喘息は風邪などと異なり、継続的なケアが必要です。治療期間やアレルギーの確認のためにはアレルギー検査が重要です。当院ではCAP-16鼻炎喘息の項目を含むアレルギー検査を行い、季節性および通年性のアレルゲンに対する反応を詳細に確認します。

治療法や期間は患者様によって異なりますが、アレルギー検査を通じて適切な治療法を導き出せば、再発を防ぐことができます。治療の効果がみられない場合や呼気NO値が高い場合は、強い薬の使用が必要となり、その際には腎機能や肝機能などの採血も行います。当院では患者様の状態に合わせた最適な治療プランを提供し、安心して治療を受けられるよう心がけております。

 

当院の咳喘息の治療

院では気管支拡張薬の効果を確認し、β2刺激薬と吸入ステロイドの合剤を主流としています。合剤を初期治療で積極的に使用し、症状軽減を迅速に行います。β2単剤では効果のばらつきがありますが、合剤の利用で確実な治療が可能です。

治療中は年齢、症状の程度、呼気NO値などを考慮し、最適な薬の選択を行います。副作用が出た場合は柔軟に薬の変更を行います。気管支喘息の緊急治療にはβ2刺激薬のネブライザーやステロイド+テオフィリンの点滴を使用し、点滴室などで重症患者の方に対応できるようにしています。症状が安定した患者様には呼吸機能検査を勧め、肺の状態を数値で示し、治療方針を共有します。治療が安定していれば薬の減量を検討し、患者様との協力で治療を進めていきます。