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運動誘発性喘息

運動誘発性喘息(アスリート喘息)

気管支喘息は気管支の慢性的な炎症により、発作的な咳や呼吸困難が起こる慢性の呼吸器疾患です。特に運動によって発作が引き起こされる場合、それを運動誘発性喘息(EIA)と呼びます。この症状は、運動開始から終了後に即座に現れる即時型反応と、運動終了後数時間経ってから現れる遅延型反応の2つのタイプがあります。特に後者の遅延型反応では、運動誘発性喘息に気づきにくいため、注意が必要です。

当院では、競技レベルを問わず対応が可能です。運動によって引き起こされる喘息症状にお悩みの方は、ぜひご相談ください。

運動誘発性喘息の予防

ウォーミングアップと運動負荷の調整

運動に伴う急激な換気量増加が原因の一つとなるため、ウォーミングアップを十分に行い、急激な運動負荷の上昇を避けます。

環境の注意

気温や湿度が極端に低い場所でのトレーニングは注意が必要です。寒冷な環境や乾燥した空気は気管支を収縮させやすくなります。

マスクの利用

気管支粘膜からの水分蒸発を防ぐために、特に寒冷・乾燥した環境でのトレーニングでは、ウォーミングアップ中などにマスクが役立つ場合があります。

これらの予防策を実践することで、運動誘発喘息の症状を軽減し、快適なトレーニングを継続できる可能性が高まります。ただし、個々の症状や体調に合わせて医師と相談しながら対策を検討することが大切です。このような対策を行っても症状が出現する場合は、治療を強化する必要があります。またトレーニング前に吸入薬を使用するなど、スポーツを踏まえた治療戦略が必要となる場合もあります。

注意事項

運動誘発性喘息の治療に使用される一部の薬物は、ドーピング検査に影響を与える可能性があります。
世界アンチ・ドーピング機関(WADA)のドーピングに関するルールや制度は毎年1月1日に改訂され、世界中の様々なスポーツがそれに則ったルールで運営されています。非常に厳格なルールになりますので、適切なアドバイスを受けることが重要です。当院では多くの日本代表選手をサポートしてきた医師が、適切なアドバイスとアンチドーピング上問題とならない治療法を行います。

 

運動誘発性喘息の症状

以下のような症状がある場合は、運動誘発性喘息の可能性があります。症状に悩まれる方は、適切な診断と治療のために専門医にご相談ください。

  • 運動中・運動直後に咳が出る
  • 運動すると息苦しくなる
  • 運動中にヒューヒューゼーゼーする

アスリート喘息外来

アスリートにとって運動誘発性喘息は深刻な問題であり、さまざまな競技で発症する可能性があります。実際に、トップアスリートの5〜7%がこの症状に悩まされているとされています。運動開始後の咳や息切れは、選手生命に影響を与える重要な問題です。

当院の医師はこれまでに、様々な競技種目の選手、例えばラグビー、サッカー、野球、柔道、ソフトボール、水泳などにおける運動誘発性喘息に対応してきました。競技における最高のパフォーマンスを引き出すために、お気軽にご相談いただければと思います。

スポーツ内科

よくある質問

運動誘発性喘息ってどんな病気?

運動誘発性喘息は、運動の開始数分後から咳やゼーゼーする息切れ、呼吸困難などが始まり、運動を終えるまで続く病気です。また、運動をやめてから数時間後に症状が現れるものを遅発性運動誘発性喘息といいます。この病気は、小学生の習い事や中高生の部活動、トップアスリートが参加するオリンピックや世界選手権など、どのレベルの選手にも発症する可能性があります。

運動誘発性喘息の症状は?

運動誘発性喘息の症状は、運動によって引き起こされる息切れ、咳、喘鳴であり、これらの症状により呼吸困難が生じます。運動中にこれらの症状が発現すると、運動のパフォーマンスが低下し、本来の力を十分に発揮できなくなります。このため、学生やアスリートの中には症状に悩まされ、時に運動を断念することがあります。しかし、適切に治療すれば症状をコントロールすることは可能であり、ほとんどの場合で運動を続けることができます。他院で運動の継続が不可能といわれた場合でも、あきらめずにご相談ください。

運動誘発性喘息の原因は?

運動誘発性喘息は、酸素需要が増加し換気量が増えることで気道を通る空気の量が増え、相対的な狭窄状態になることに加えて、冷気の吸入や気道の乾燥による浸透圧の変化などが原因とされ、これが気管支の収縮を引き起こし、喘息発作が発生すると考えられています。適切な治療や発作を予防するための注意を実施することで、症状をコントロールし、安定した運動が可能となります。

運動誘発性喘息はどのような運動で起こりますか?

運動誘発性喘息は、屋外で行う激しい運動を伴う競技の選手に多く見られ、特に陸上競技やトライアスロン競技、自転車競技、クロスカントリースキー、ヨット競技などの個人種目や、ラグビー、サッカー、バスケットボール、テニスなどの球技競技者で影響を受けやすいとされています。この症状は運動開始後に咳や息切れ、呼吸困難が現れるもので、競技終了後にも症状が持続することがあります。気になる症状があれば、どの競技を行っているかに関わらず、受診して適切な診断と治療を受けることが重要です。

運動誘発性喘息の診断方法は?

運動誘発性喘息の場合、日常生活では症状がなく、安静時の呼吸機能検査では異常が見られないことが一般的です。そのため、詳細な問診や治療経過、運動前後での呼吸機能を比較することが診断上重要です。時に院内で運動負荷をかけ、症状や運動後の呼吸機能の変化を観察することで、運動誘発性喘息の有無を確認します。

運動誘発性喘息どのくらいで治る?

軽度の運動誘発性喘息は、一般的に運動中止後に自然軽快することがあります。アマチュアスポーツでは運動強度の調整で症状が改善することもありますが、中高生以上のトップアスリートの場合、運動強度をむやみに調整することによってトレーニングが不足し、結果が出なくなることにつながる可能性があります。

運動誘発性喘息の予防法は?

運動誘発性喘息は急激な激しい運動で誘発されやすいため、定期的なトレーニングと練習前のウォーミングアップが重要です。特に寒い時期にトレーニングをする際はマスクによって吸気を温め、加湿することが効果的です。寒冷刺激や湿度の低下は発作を引き起こす可能性があるため、これらの環境への対策も考慮されます。薬の継続使用と、運動開始前の短時間作用性気管支拡張薬の吸入など、薬物療法も重要です。

運動誘発性喘息の治療薬は?

運動誘発性喘息の治療では、コントローラーと呼ばれる薬剤を常用して発作の予防を行います。これには吸入ステロイド薬や長時間作用性気管支拡張薬のほか、ロイコトリエン受容体拮抗薬があります。また、運動の約15分前に短時間作用性気管支拡張薬を使用することで、運動誘発性喘息の発生を抑えることができます。これらの薬物療法とともに、定期的なトレーニング、ウォーミングアップ、環境対策も重要な要素です。

アスリート特有の注意点は?

喘息治療薬の中には、一部がドーピング検査で違反薬剤と見なされる可能性があるため、トップアスリートはドーピングに抵触しない薬剤の選択が必要です。トレーニングや競技活動において使用する薬物は、国際オリンピック委員会(IOC)や世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の規定に従い、安全なものを選定することが求められます。アスリートは専門医や医療スタッフと連携し、治療薬の使用について慎重な判断を行うべきです。

運動誘発性喘息の運動制限は?

運動誘発性喘息があっても、適切な管理を行えば発作は強くは現れないため、運動制限は不要です。しかし、スポーツの指導者の中にはこの病気ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸)の知識が不足していることがあり、呼吸困難を病気の症状と理解してもらえない場合があります。スポーツによる症状が疑われた場合は、スポーツ内科を受診して適切な診断と治療を受けるべきです。