運動誘発性喘息とは
激しく体を動かした時や長時間の運動後に、喘息(ゼーゼーしたり、息切れ)のような症状が出ることを「運動誘発性喘息(EIA)」と呼びます。喘息の方だけでなく、普段は症状のない方にも起こるため、「運動誘発気管支攣縮(EIB)」と表現されることもあります。
トップアスリートでも発症が多く、別名『アスリート喘息』とも言われています。
子どもの発症が多く、大人でも発症する可能性があります。
運動誘発性喘息には運動中~直後に症状が出る即時型と、6〜12時間後に症状が現れる遅発型があります。特に遅発型は気づきにくいため注意が必要で、子どもの場合、運動会などの学校行事後の夜間に症状が出るケースが多いです。
運動誘発性喘息は、気道が刺激され収縮することで起こるため、冬の冷たい空気は気管支を刺激しやすく、急な運動能力の低下や冬になって症状が出る方、「最近運動がきつい」と感じる方も少なくありません。気になる変化があれば、どうぞ早めにご相談ください。
症状
運動誘発性喘息では、運動中や運動後に以下の症状がみられます。
- 息苦しさ
- 咳込み
- 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)
- 胸の圧迫感
これらの症状が続く、お悩みの方は、運動誘発性喘息の可能性がありますので、適切な診断と治療のために一度専門医にご相談ください。
運動誘発性喘息の原因
運動誘発性喘息は、運動によって気道が刺激され収縮することで起こります。主な原因は以下の通りです。
- 冷たく乾燥した空気
- 激しい運動による気道の乾燥
- 花粉や塩素など環境刺激
これらの症状が続く、お悩みの方は、運動誘発性喘息の可能性がありますので、適切な診断と治療のために一度専門医にご相談ください。
運動誘発性喘息はどんな人がなりやすい?
運動誘発性喘息は、全力で走ったり、寒い中で運動することで、気道が刺激されて咳や息苦しさが出ることがあるため、実は誰にでも起こり得える症状です。特に以下のような気道が敏感な方に起こりやすい傾向があります。
- 既に喘息がある、または過去に喘息症状があった方
- アレルギー体質の方
- 冷たい空気を吸いやすい冬場の屋外スポーツを行う方
- 長時間の運動や激しい運動を続ける方
運動誘発性喘息の予防
運動誘発性喘息の予防には、以下の対策が有効となります。
- 急な運動をせず、運動前にしっかりウォーミングアップをする(最も有効)
- 冬の屋外では、マスクやマフラーで口元を保温する
- 必要に応じて、医師の指示に沿って運動前に薬を使う
- 無理のない範囲で運動習慣を続け、体力を整えておく
こうした対策を続けることで、発作が起こりにくくなります。運動中や運動後に咳込みや息苦しさが急に強くなる場合、あるいは呼吸の違和感が続く場合は、早めに受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
運動誘発性喘息の治療
運動誘発性喘息の治療は、喘息の治療と同じく “気道の炎症をしっかり抑えること” が中心になります。主な治療方法には次のようなものがあります。
吸入ステロイド薬を継続して使用する
気道の炎症を落ち着かせることで、運動時の発作を起こりにくくします。
運動前に気管支拡張薬を使用する
運動の15〜30分前に短時間作用型の薬を吸入すると、発作の予防につながる場合があります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬の服用
炎症を抑える作用があり、運動誘発性喘息にも有効とされています。
※吸入のステロイド薬は、種類によってドーピングに引っかかる可能性がありますので必ず専門医の指示のもと吸入をおこなってください。
運動誘発性喘息が起きたらどうすればいい?
運動後に発作が起きた際は、まず無理をせず体を休め、ゆっくり呼吸を整えることが大切です。
発作時の基本的な対処としては、以下が効果的です。
- 座った姿勢でお腹に手を置き、ゆっくり長く息を吐く
- 腹式呼吸で呼吸を安定させる
- 少量ずつ水分をとり、気道の乾燥をやわらげる
多くの場合、この対応で20〜30分ほどで落ち着いてきますが、改善が乏しい場合は、サルタノールやメプチンエアーなどの気管支拡張薬を速やかに吸入してください。
※なお、喘息治療に使われる薬には、競技によってはドーピング検査の対象となるものもあります。競技に参加される方は、必ず担当医に投薬内容についてご相談ください。
当院にご相談ください
運動をしたときに息苦しさやせき、胸の圧迫感を感じる――そんな経験をされた方は、「運動誘発性喘息」の可能性があります。
当院では、一般診療だけでなく「スポーツ内科」として、運動中・運動後の呼吸症状にも対応しています。競技者の方だけでなく、ジョギングや通勤・通学中の運動で息苦しくなる方でもお気軽にご相談ください。適切な診断とともに、日常生活やスポーツに無理なく取り組めるよう、吸入薬のご案内や生活・運動のアドバイスを含めたトータルなサポートを行います。
息苦しさや咳の原因が「単なる疲れ」だと思って見過ごさず、一度ぜひご相談ください。